鏡の原理【連載第六回】人は鏡の如きもの2
前回お話した「鏡の原理」についてここで再度まとめておきます。私達が誰かに発する言葉や行動そして感情などは、そっくりそのまま鏡の原理のように相手から返されてくる。自分が誰かに意地悪な事を言ったり、行ったり、考えたりすると、この原理でその相手の人から自分も同様にされる。誰かに親切すれば相手からも親切にされる。
このように自分から相手への行為や気持ちがあたかも鏡に映るが如く自分にも返ってくる原理を、鏡の原理と呼ぶ事にしました。
今回は、この「鏡の原理」というものがわれわれのしあわせとどのような原理でつながっているか、という事について少しお話したいと思います。
「鏡の原理」がわれわれに教えてくれる事は実に素朴なことです。
何かをしてもらいたかったら、先ずそれを相手にしてあげる。また人からされたくない事は自分も決してしてはいけない。
これは口で言うのは簡単ですが実行するのは大変に難しいですね。しかし、日々の生活の中でこれを地道に心掛けていく事が「人生を幸せに生きる」ための第一歩です。
お寺の住職をしておりますと、毎日いろいろな悩み事の相談をうけますが、夫婦仲や嫁姑間がうまくいかない、といった家庭内の悩みもけっこう多くきかれるんです。これらの人達の話を聞いておりますと、たいていの方は相手のほうが悪いということばかりをしきりに主張しています。ある奥さんはうちの亭主が悪いといい、ある姑さんはうちの嫁がうちの嫁がと言う。
しかし「鏡の原理」ということを考えこの原理とあわせると、この方々のご主人やお嫁さんもおそらく、うちの女房が、うちの姑が悪い、と考えているに違いありません。
二枚の鏡を向かい合わせにして置くとなにがおこるでしょうか。鏡の中に鏡の像が、その像の中にもまた鏡の像が・・というように、真中の像が両方の鏡に幾重にも重なって映る・・・。
先の夫婦、嫁姑間ではこれと同じ事が起こっています。悪い感情が御互いの鏡で反射しあって、いつまでも際限なくつづいる原理がおきているのです。
反対に大変に中の良い夫婦の事を考えてみますと、ここではお互いの相手を思いやる気持ちが鏡に反射しあって、ますますその絆が深まってゆく原理がおこるでしょう。
相手に迷惑をかけてはいけない、嫌がることをしてはいけない、というだけでなく、一歩進んでもっと積極的に相手に良い事をして、相手に愛情を注ぐこと。この原理を仏教では「慈悲」と申しますが、この原理「慈悲」の心をすべての人と分かち合うことこそ我々僧侶の願いです。
人間は一人だけでは生きていけません。家庭・会社といった様々な人間関係のなかで暮らしております。「鏡の原理」の原理に従って、ある人が自分の幸せを望んで他の人に親切に接するならば、その当人のみでなく、その人が接する他の人々も幸せになるでしょう。
自分が幸せになるということは、同時に自分の回りの人々も皆幸せになることであり、また自分の回りの人々が幸せであってはじめて自分も幸せになれる。
そして、その為にはまず自分から「慈悲」の心を相手に投げかけること。
多くの人々がこうした原理にもとずいて行動すれば、始めは単に自分の幸せを願ったとしても、原理にて多くの「鏡」に反射されて結果的には家庭・会社・社会といったより大きな全体の幸せにつながってきます。
仏教の「慈悲」はすべての人々をつつみこんで幸せにしようという大きな愛情です。しかしその始まりは、一人一人が幸せな人生を送りたいと望む、ほんのささやかなものに過ぎません。
皆さんも「鏡の原理」を考えながら身近な人と接することから始めてみて下さい。楽しく幸せな人生の輪が少しずつひろがってゆくことと思います。
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